キングダム好き必読:呂不韋が主人公の小説「奇貨居くべし」【まちライブラリー本紹介】
キングダム好き必読:呂不韋が主人公の小説「奇貨居くべし」
Umidassにあるまちライブラリーの本を紹介するコーナーです。
漫画キングダムが人気ですね。少し前にアメトークでキングダム芸人が流れてから、さらに人気が出ているようです。キングダムは、中国の春秋戦国時代に秦を統一して始皇帝となった秦王の政と、大将軍を目指す少年の信を中心に、戦乱の世を描いた漫画です。アニメにもなっていてDVDも販売されています。
最初に断っておくと、私個人はキングダムの漫画は読んでいないです。DVDは全巻見たのですが、漫画は全話一気読みしたいタイプなのでまだ手をつけていません。ただ、まだまだ終わらなさそうなので、完結前には購入すると思いますが。。
春秋戦国時代の人物は知られていないので、話の中でイメージしにくい人が多く登場します。
中国の歴史関係でいうと、有名なのは三国志ですね。登場人物も曹操、劉備、孫権を始め多くの人が知っている人が登場します。次に有名なのが項羽と劉邦か、封神演義(太公望)あたりでしょうか。春秋戦国時代の人物としては、孔子や孫子が有名ですが、その他は興味が無いと知っている人は少ないですね。
キングダムは大筋として歴史通りに話が進んでおり、多くの登場人物は歴史上実在の人物です。そしてキングダムの中では、過去の人物として歴史上の人物が話に出てきます。キングダムでは六大将軍として白起や、他国の人物として伝説の軍師として楽毅、そして孟嘗君など会話の中に登場してきます。物語の中である程度は誰にでもわかるように伝えられていますが、もっと詳しく知ることでキングダムをより楽しく読むことができます。そんな本を何回かにわけて紹介していきたいと思います。
まずは、呂不韋のことがわかる「奇貨居くべし:宮城谷昌光著」
そんなキングダムをより楽しむための本として紹介する第1弾は、呂不韋が主人公の小説「奇貨居くべし」です。
「奇貨居くべし」は「きかおくべし」と読みます。呂不韋は、キングダムの秦王政の父である子楚を他に有力な皇子がいたにも関わらず王とした人です。趙の人質だった子楚を助けて呂不韋が大きな利益を上げたことから「奇貨居くべし」とは、珍しい品物は買っておけば、あとで大きな利益をあげる材料になるだろう。得がたい好機を逃さず利用しなければならない意味の故事です。
ちなみに子楚は、キングダムでよく出てくる昭襄王の子供ではありません。昭襄王の次の王が孝文王でその子供が子楚(荘襄王)です。孝文王は、在位1年で没したのであまり話にはでてきません。
「奇貨居くべし」は全5巻で呂不韋の一生を書いた小説
「奇貨居くべし」は全5巻です。ちなみに1巻、2巻という形ではないので、購入する場合には順番を間違えないでください。
春風編(1巻)→火雲編(2巻)→黄河編(3巻)→飛翔編(4巻)→天命編(5巻)という構成です。
作者は違えどキングダムの呂不韋につながる人物像として書かれてると感じます。
歴史小説は書き手によって、同じ人物でも全く異なる人物として書かれることが多くあります。そのことは歴史小説の楽しみ方の一方で、読み手にとっては満足感を得たり、不満足になったりします。「奇貨居くべし」は、呂不韋の少年時代~晩年までが書かれた小説です。
キングダムでは呂不韋は秦王政や信たちの宿敵として描かれており、腹黒く、政を暗殺しようとしたりする不遜な人物だが一流の政治家としても書かれています。
「奇貨居くべし」の呂不韋はそういったイメージとはかけ離れた人物として書かれています。一方で、秦王政とは良い関係ではなく、キングダム同様に宿敵としての存在でありますが、キングダムとは違い、呂不韋の一生を通した結果としての秦王政との関係ですので、キングダムとはまた違った角度から見た2人の関係とも言えます。
麒麟は一躍にして十歩なることをあたわず、駑馬は十駕すればすなわちこれにおよぶべし
これは、「奇貨居くべし」の中で呂不韋の師匠となった荀子の言葉です。その意味は、いかなる名馬でも一度に十歩は進むことができない。名馬がひとはしりで到着したところへ駄場であっても十回走れば到着できる。転じて天才が1年でなした偉業に凡人でも10年かかれば到達できる。
荀子のこの言葉を聞いて、頭を下げて荀子に教えを請いたのが「奇貨居くべし」の中での呂不韋です。
そして、人を動かすふたつの力である「利」と「徳」であれば「徳」を選ぼうという人物として書かれています。
孝文王が1年で没し、子楚(荘襄王)が3年で没す不幸な晩年
「奇貨居くべし」の中で著者の宮城谷氏は、呂不韋は、「天下は一人のための天下に非(あら)ざるなり。天下の天下なり。」と言ったことを民主主義宣言とも呼べるものだと言っています。2,000年以上前の戦国時代に民主主義の原型といえるものでも描いていたかもしれないとイメージさせるのが呂不韋のすごさです。
ただ、子楚(荘襄王)の父である孝文王が1年で没し、子楚(荘襄王)が王になり、これからというところで子楚(荘襄王)が没してしまったことは非常に不幸です。
子楚(荘襄王)没後はキングダムと同じ時代に
子楚(荘襄王)没後は、キングダムと同じ秦王政の時代になります。キングダムの政を好きな人にとっては、少し不満となるような政として書かれています。ですが、呂不韋から見ればキングダムの中でも同じかもしれません。
「奇貨居くべし」の中ではキングダムでも出てくる廉頗や蒙驁(もうごう)将軍も出てきます。ちなみに蒙驁(もうごう)将軍は、キングダムの中では凡庸に書かれていますが、実際には70以上の城を落とした名将です。「奇貨居くべし」の中では呂不韋の考えを理解する人物として登場します。
また、史実とは関係ないところでの一致点としては、キングダムでは、政の恩人として女商人の紫夏が登場します。「奇貨居くべし」の中でも、紫夏にあたる女商人が出てきます。たまたまなのか、そういった人物がいないと政という人物像が描けないということなのかもしれません。
近いうちにキングダムをさらに楽しめる小説を紹介します。